薄いチタンやステンレスの板を巻いて筒状にする巻き煙突は、連結して組み立てる煙突に比べると収納時にコンパクトになるのが大きな魅力です。
しかし強度面では注意事項も多く、たとえばネジを締めて固定するタイプの煙突ガードとの相性が良くない点もその1つですね。
通常の煙突と同じ感覚でガードを装着していたら使用中に煙突が折れてしまったなんて話も…
そのため、巻き煙突のストーブをテント内で使用したい場合にはガードを装着しなくても煙突を出せるポート付きのテント選びが重要だと私は考えています。
ところが、この煙突ポートはテントメーカーごとに素材や作りが異なり、そのため耐熱温度もテントによって様々です。
YouTubeやSNSでも、耐熱温度の低い素材のポートと知らずにガード無しで煙突を通してしまい、焦げる・燃えるなどの事故を起こしてしまった人もちらほら見かけます。
そこで今回は、私が所有しているテントのうち、煙突ポート付きのテント4種に薪ストーブをインストールし、煙突ポートの耐熱性をテストしてみた結果をまとめて紹介します。
- テント内での薪ストーブの使用は「自己責任」
- DUCKNOT ハンティングヘキサ T/C SW
- YOKA CABIN
- ZUKK マギーTC + エクステンションシート
- TOMOUNT 2ルームトンネルテント
- 安全対策に「やりすぎ」は無い
テント内での薪ストーブの使用は「自己責任」
この記事ではテント内に薪ストーブを入れて検証を行っていますが、テント内部への薪ストーブのインストールは基本的にメーカーも推奨しておらず、自己責任の行為となります。
今回の検証では、消火用の水等を準備したうえで細心の注意を払って検証を行っています。
また、検証結果は決して各テントの煙突ポートの耐熱性を保証するものではありませんので、あくまで参考程度にお考えください。
DUCKNOT ハンティングヘキサ T/C SW
最初に検証したのはDUCKNOTの『ハンティングヘキサ T/C SW』です。
インストールしたのはSoomloomのG-Stoveもどきですね。
ハンティングヘキサはメーカー公式の商品写真でもガード無しで煙突を通していますが果たして…。
はい、まったく問題ないですね。
一晩使用してみましたが、焦げたり燃えたりといった変化は一切見られませんでした。
煙などが出たらすぐに温度を下げて、その後はガードを装着しようと念のために持ってきていましたが出番は結局来ず。
ちなみにこの数週間後、同じテントとストーブの組み合わせでまたキャンプで使用しましたが、やはり煙突ポートは無事でしたので安心感がありますね。
YOKA CABIN
続いて試したのが『YOKA CABIN』です。
春に購入して以来、薪ストーブシーズンの到来を待ちかねていました。
組み合わせた薪ストーブはPOMOLYのチタン薪ストーブ『T-BRICK』です。
冒頭でも話題に挙げた巻き煙突タイプのストーブですね。
耐熱性能を未検証のテントで一晩過ごすのは不安ですので、この日は昼間のうちにストーブの火入れを行いました。
煙突ポートの素材感はハンティングヘキサのものとほぼ同じですね。
火入れをして1時間ほど燃焼させてみたところ、煙突ポートには特にダメージなど見られなかったため、火を消して夜を待ちました。
この日は12月30日ということで気温もそれなりに低く、21時頃にはテント内にこもってストーブで暖を取ることに。
二次燃焼機構を備えたT-BRICKの燃焼効率は非常に優秀で、ぶっとい広葉樹の薪もガンガン燃やしてくれます。
側面の大きなガラスから炎を眺めつつ、数時間燃焼させてみましたが、煙突ポートはほぼノーダメージでした。
流石、薪ストーブのインストールを想定したテント『YOKA TIPI』を以前から販売されているメーカーさんの製品ですね。
ZUKK マギーTC + エクステンションシート
パップテント飽和時代に現れた超個性的なテント、ZUKK(ズック)の『Maggie TC(マギーTC)』をご存じでしょうか?
専用の前幕『Maggie TC Extension Sheet(マギーTCエクステンションシート)』を取り付けた状態はまさに基地!
1stロット発売時はスルーしていたのですが、専用前幕を取り付けた姿があまりにも格好良すぎたので、前幕がセットになった2ndロットの発売時に購入しました。
ちなみにその時は予約受付の開始5分後には売り切れていましたね…
さて、そんなマギーTCですが公式サイトを見ると以下のような記載があります。
※撮影の都合上、薪ストーブに煙突ガードを装着しておりません。実際に火入れする場合は必ず煙突ガードをご使用ください。
煙突ガードの装着を前提として設計されています。薪ストーブをご使用の際には必ず煙突ガードを装着してご使用ください。
煙突ポートを備えたテントでここまでガードの装着を念押しするのも珍しいなと思いつつ、1stロットを入手した方の感想をSNSで探してみると「ガード無しで使用してポート周辺を焦がしてしまった」という投稿がありました。
実際にマギーTCの煙突ポートを見てみると、ハンティングヘキサ・YOKA CABINのそれとは異なり、どうやら2種類の生地を縫い合わせたような作りになっていました。
生地そのものはスパッタシート等にも使われるような素材のようですが、私が気になったのはこの雑な縫製に使われている糸の方です。
POMOLYのチタン薪ストーブ『T-BRICK』をインストールして検証してみると…
火入れをして数分で、縫われている糸が溶けて(焦げて?)しまいました。
こちらは検証終了後に撮影した写真ですが、煙突に触れていた付近の糸の様子がわかりやすいですね。
この日はデイキャンプでしたのでテストは1時間ほどと短かったのもあってか煙突ポートやテント生地が燃えてしまうことはありませんでしたが、その短い時間の検証でも煙突ポートはだいぶ変色していました。
メーカーからガードの装着が注意喚起されているとはいえ、メーカー・製品によってここまで耐熱性能に差があると、特にキャンプ初心者さんは要注意ですね。
ちなみにですが「コスパがヤバい」と評判のGOGlampingのパップテント『G・G PUP』に付属する煙突ポートも耐熱温度が非常に低く、ガード無しで使用して燃やしてしまう人が多かったためか、現在は商品ページにガード付きで使用している写真を追加したり、より耐熱温度の高い交換用のシートを発売したりと改善しています。
POMOLYの煙突ポートに交換してみた
使用して数分で糸が溶けてしまうような煙突ポートを使うのは安全面でも精神衛生上も良くないため、他社のポートに交換してみることに。
マギーTCの煙突ポートは縦横ともに25cmの正方形となっており、これとほぼ同じサイズなのがPOMOLYの煙突ポートです。
そもそもマギーTCは開発中のプロトタイプがPOMOLYのテント『STOVEHUT』にそっくりというかそのままな形状で、当初は「またパクリメーカーが出てきたか…」と思ったほどでした。
さて、そんなPOMOLYは先ほど紹介したT-BRICKををはじめ、巻き煙突の薪ストーブをインストールすることを想定としたテントを多数販売しているメーカーです。
そんなメーカーの煙突ポートならば耐熱性能も問題無いだろうと考え、マギーTC付属のものと交換してみました。
交換してみた結果ですが、ご覧の通りです。
きれいな顔してるだろ。一晩使用した後なんだぜ。それで…
糸も含めて全くの無傷、似たような作りの煙突ポートでもここまで違いが出るんですね。驚きです。
というか開発時点でPOMOLYのテントを参考にしたのなら、こういう良い部分もきっちり踏襲してほしかったなぁと思いますね。
ガード無しでの使用を推奨するわけではありませんが、マギーTCの煙突ポートはあって無いようなものなのでPOMOLYに交換することをおすすめします。
あ、マギーTC自体は滅茶苦茶気に入ってますよ。見てください、この秘密基地感を。
TOMOUNT 2ルームトンネルテント
最後に紹介するのが、今回唯一のポリエステル生地のテントであるTOMOUNT(トモウント)の『2ルームトンネルテント』です。ちなみに他のテントの生地はすべてTC(ポリコットン)ですね。
トンネル形状のテントにしては珍しく煙突ポートを備えており、商品写真には「煙突ポートを使え」とまで書かれています。(おそらくガバ翻訳のせいですが)
TOMOUNTのトンネルテントの商品画像だけど「薪ストーブを使え(命令)」で草https://t.co/9qPAgilOtW pic.twitter.com/iz9JHUxzPY
— うぃる@S660キャンパー (@wright_ssvd) January 19, 2023
そんなTOMOUNTのテントですが、こちらは2023年2月に購入したばかりでまだ泊まりでの検証はできていません。
デイキャンプにて1時間ほど薪ストーブを使ってみたテスト結果のみとなりますのでご了承をお願いします。
ちなみに煙突ポートの作りはハンティングヘキサやYOKA CABINと異なり、マギーTCやPOMOLYのように穴付近が縫われているタイプになります。
耐熱性能の検証ですので煙突とポートが触れないように恐る恐る使うのでなく、ぴったりと接触するように配置しましたが、煙突の根元が赤く変色するくらいに薪を燃やしてもパッと見は問題無さそうですね。
その後、煙などが出ることも無く1時間の燃焼テストを終えました。
テントの撤収時に煙突ポートをチェックしてみると、表側は特にダメージは見られませんね。
裏側の煙突と強く接触していた部分の生地は変色し、糸も溶けているように見えます。
ところが不思議なのが、マギーTCの時とは異なり、縫製が解れて生地が剥がれてしまうような変化が無かったのです。
とはいえ生地や糸は熱の影響を受けていますので、安心して使えるかはまだ確信できないですね。
泊まりで一晩使用したらまた追記します!
安全対策に「やりすぎ」は無い
テントへの薪ストーブのインストール、ましてやガード無しでの使用自体は決して推奨はしません。
安全対策は「やりすぎ」なくらいでちょうど良いと考えており、そもそもテント内にストーブを入れない方が間違いなく安全です。
それでも、危険性を承知したうえで自己責任の範囲で楽しみたいと思う場合は、出来る限りの安全対策を徹底しましょう。
そして私が実施している安全対策の1つが、今回ご紹介したような「テスト」です。
テントや薪ストーブを新しく購入した際は、いきなり一晩ぶっ通しで使うようなことはせず、デイキャンプや昼間に試して様子をみたうえで夜に使用しています。
また、1泊2日のキャンプ時で昼間にテストをして危険だと判断した場合に備え、暖房無しでも問題無く過ごせるくらいの防寒装備を持参するようにしています。
そのほかにも多数の対策をしていますが、それでも「絶対安全」はありませんので、やりすぎなくらいの対策を整えて冬キャンプを楽しんでいきましょう!