ポータブル電源は、いまやキャンプなどのアウトドアシーンで見かけることもすっかり当たり前な定番アイテムの1つになりました。
「大は小を兼ねる」とは言いますが、とはいえ容量や出力が大きい製品ほどサイズや重量も巨大になっていきます。
弊ブログ『CAMPERS』でも以前に1920Whの超大容量ポータブル電源を紹介しましたが、たとえば暖房器具を使わないシーズンの1泊2日ソロキャンプ程度であれば、そこまでの容量は持て余してしまいます。
にもかかわらず、20kgオーバーの荷物を持って行くというのはなかなかに重労働ですよね。
使用する電子機器など自身の利用シーンに合わせた最適な製品を選ぶのが、快適なキャンプを最小限の労力で楽しむコツです。
さて、キャンプ用のポータブル電源として人気・定番のサイズといえばやはり500~700Whクラスの製品です。
実際、1泊2日のキャンプで使用するなら、そのあたりの電源容量が必要十分だと感じます。
さて今回は、これまでに20台以上のポータブル電源を試してきた私がトップクラスに「良い!」と感じた製品のメーカーであるPECRON(ペクロン)から、使いやすい600Whクラスのポタ電の紹介です。
- PECRON E600LFP ポータブル電源
- PECRON E600LFP ポータブル電源 外観・端子類
- PECRON E2000LFPを夏キャンプで使ってみた
- 手ごろなサイズと価格の優秀なポータブル電源
PECRON E600LFP ポータブル電源
今回紹介するのはPECRONの614Whポータブル電源『E600LFP』です。レビューを書くにあたり、メーカーから提供していただきました。
以前にブログで紹介しましたE2000LFPと特徴がよく似ており、E600LFPを一言で表すなら「E2000LFPのコンパクト版」と言っても良いほどです。
サイズがコンパクトになったことで容量・出力も小さくなっていますが、そうは言っても出力1200W・容量614Whとまさに必要十分なサイズ感となっています。
そしてE2000LFPの特徴でもあったリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)をE600LFPも採用しております。
最近は大手メーカーもリン酸鉄リチウムイオン電池を積極的に採用するようになってきましたが、実は「つい先日までメインの製品が三元系リチウムイオン電池を使っていた」なんてメーカーも珍しくありません。
リン酸鉄系リチウムイオン電池は安全性が高く寿命も長い
リン酸鉄系と、従来のポータブル電源の定番であった三元系の違いを簡単にまとめますと「リン酸鉄系の方が安全性が高く、そして長寿命」となります。
安全性については実際に何か事故でも起きるまで分かりませんが、寿命については一般的なユーザーでも恩恵を受けやすい部分ではないでしょうか。
そして寿命とは、スマホやタブレットのバッテリー持ちをイメージしていただくと分かりやすいです。
リチウムイオンバッテリーは充電・放電を繰り返していくうちにバッテリー持ちが少しずつ低下していきますよね。
そのようにバッテリー持ちが悪くなっていき、フル充電しても本来の容量の80%ほどしか使えなくなる状態を「寿命」と表しています。
その寿命が来るまでの充放電のサイクルが三元系はおよそ500回なのに対し、リン酸系はなんと3000回ほどとされているのです!
メーカーや製品によっても謳われているサイクル数は異なりますが、E600LFPでは3500回以上と言われていますね。
ポータブル電源は数万から数十万円ほどの製品もあり決して安い買い物ではありませんので、「買い替えをせずに長く使い続けられる」というのは非常に重要なポイントではないでしょうか。
E600LFPはE2000LFPに比べてコンパクトかつ低価格ながら、そうした長寿命なリン酸鉄リチウムイオン電池採用という嬉しい特徴をしっかりと引き継いでいるのです。
PECRON E600LFP ポータブル電源 外観・端子類
それではE600LFPの実物を見ていきましょう。
厚みのあるしっかりとした箱へと二重に収められております。
箱を開けるとケーブル等の小物が収納されたケースが出てきました。
詳しくは後述しますが、この収納ケースがE2000LFPに付属していた物よりもかなり改善されており、個人的に気に入ったポイントの1つでもあります。
収納ケースのハマっていた緩衝材を外すとE600LFPの本体とご対面です。
E2000LFPに比べて軽いのはもちろん、天面に持ち手がついているため片手でも箱から簡単に取り出せました。
緩衝材も高級感がありますね。
安価な製品にありがちなポロポロ崩れている発泡スチロールだと開封作業だけで粒が舞って部屋が散らかるので、緩衝材にもコストをかけているメーカーは好印象です。
ちなみに重量はE2000LFPが約22kgなのに対し、E600LFPは約9.4kgとなっています。
耐荷重30kgのフィールドラックに載せてみるとE2000LFPでは脚がしなっていましたが、軽量なE600LFPでは安定感があります。
箱の中に入っていたのはE600LFP本体と付属品収納ケース、この2つのみです。順番に見ていきましょう。
まずはE600LFP本体からです。
四隅に配置された保護ラバーのオレンジ色がポップで可愛いですね。
全ての入出力端子は本体正面に集約されています。(この仕様ほんと好き)
出力端子は以下の通りで、ワイヤレス充電以外は全て正面からアクセスできます。
- AC出力ポート×3
- USB-C出力ポート×1(最大100W)
- USB-C出力ポート×1(最大18W)
- USB-A出力ポート×2(最大18W)
- DC出力ポート×2
- シガーソケット出力ポート×1
- ワイヤレス充電×1(最大15W)
E2000LFPに比べて数が減っている端子がほとんどですが、USB-Aについては10Wが無くなった代わりに18Wが2つへと増えています。
ポータブル電源本体を充電するための入力端子については、ACアダプター等を繋ぐGX16MF充電ポートと、シガーソケットから繋ぐDC5521充電ポートがそれぞれ1つの計2ポートとなります。
2ポートありますが同時に接続しての充電には非対応です。
最大15Wのワイヤレス充電が天面で行える点もE2000LFPと同様ですね。
Pixel 7aで試しましたが充電されているのを確認できました。
E2000LFPとは異なり、拡張ケーブルの接続は行えないため、側面と背面は超シンプルです。
ケーブルがあっちこっちから飛び出すのは好みでないため、PECRON製品のように正面側で全て行えるのは非常にありがたいです。
機能・性能面は基本的にE2000LFPからオミットした仕様がほとんどなのですが、E600LFPが優る点もあります。
それがLEDディスプレイの表示内容です。
E2000LFPと同様に1%単位でのバッテリー残量と使用可能時間が細かく表示されるのに加え、「現在のAC出力がマックスの何パーセントほどなのか」を車のスピードメーターのような形で表示してくれます。
視覚的にも面白いですし、消費電力の大きな機器を組み合わせて使う際にも安心して使用できますね。
収納ケースとその中身の付属品も見ていきましょう。
- AC充電アダプター
- MC4 ソーラー充電ケーブル
- 車載用充電ケーブル
- 付属品収納ケース
- 取扱説明書
写真にはアンダーソン ソーラー充電ケーブルが写っていますが、現在販売されているE600LFPには付属されていないとのことです。
開封時にも触れましたが、この収納ケースがとにかく良いですね。
E2000LFPに付属していたのは薄手のパッドが入ったペラペラ素材なうえ縫製のほつれも多く、かなりチープでした。
それがE600LFPではEVA素材でしょうか、頑丈でしっかりとした素材のケースになっており、ACアダプターも安心して持ち運べます。
持ち手もラバー素材で、ファスナーも止水仕様になっているのか、全体的に満足度が大きく向上しています!
ACアダプターはマットブラックな金属筐体で相変わらずスタイリッシュですね。
出力はE2000LFP付属のACアダプターに比べると半分程度になっています。
ACアダプターでポータブル電源を高速充電
E2000LFPの半分程度と言いましたが、ACアダプターのパワーも決して非力というわけではありません。
300W近い電力で充電が行えるため、2時間半もかからずにフル充電できます。
実際にゼロから充電を開始したところ、1時間で46%までバッテリー残量が回復しました。
この速さであればキャンプ当日の朝であっても支度中にフル充電できてしまいますね。
また、この日は静岡県で記録的な豪雨の日だったのですが、災害の危険性も高まっていたため、停電に備えて充電をしておきました。
停電に備えてポタ電を充電しておく pic.twitter.com/4ZL110MVdD
— うぃる (@wright_ssvd) June 2, 2023
いざという時の備え、防災用品としてもポータブル電源があると安心感が大きいですね。
PECRON E2000LFPを夏キャンプで使ってみた
さて、それではE600LFPをキャンプで使用してみた様子を見てみましょう。
キャンプで使用する消費電力の大きな家電といえば冬キャンプの暖房器具がポピュラーですが、このたび夏キャンプでも使えそうな家電を購入しましたので、その様子もお伝えします。
まずはキャンプの夜に欠かせないLEDランタンの充電です。
以前はキャンプに行く前の日に家で充電するようにしていましたが充電器に繋いだまま家に忘れてしまうことがあったため、最近は現地に到着してから充電しています。
E600LFPのUSB端子はA・Cそれぞれ2ポートのみですが、LEDランタンの充電にはスプリッターを使用しているためポート数はそこまで必要ありません。
私はゴールゼロ用にUSB-Cを複数のUSB-A(メス)に変換するスプリッターと、そのほかのランタン用に1つのUSB-Cを複数のUSB-Cに分岐させるスプリッターの2種類を使用しています。
この程度では30Wほどしか消費しないため、18時間も使用できるようですね。そもそもその前にランタンの充電が完了しますが。
夏キャンプにポータブルクーラーを導入
ランタンの充電が完了したところで、いよいよ本日の目玉である「夏キャンプに使えそうな家電」の登場です。
それがポータブルクーラーです!
寒いのは重ね着等でいくらでも対応できますが、暑いのはどうにもならないと思い、それもあって夏時期のキャンプはあまり好きではありませんでした。
しかし、たとえ暑くてもキャンプに行きたい…というかキャンプギアで遊びたいという想いが抑えられず、なんとか暑さを軽減できないかと考え、とうとうポータブルクーラーを試すことにしました!
ちなみに私が購入したのはEENOUR(イーノウ)の『ポータブルエアコン QN750』です。
自宅で試運転をしてある程度冷えることは確認済みですが、果たして屋外ではどれほどの効果があるでしょうか。
QN750はダクトホースを伸ばすことでクーラー本体を冷やす空間の内側と外側のどちらにも設置が可能です。
今回はカンガルースタイルにして小さなソロテント内で寝る予定でしたので、外側のテント内にクーラーを置き、ダクトをインナーテント内に引き込んで寝室のみを冷やすレイアウトにしてみました。
昼間のうちにクーラーを少し動かして騒音を確認していますが、10m離れると動作音が気にならなくなるといったところでした。ガラ空きのキャンプ場でもなければまず使用は難しいでしょう。
就寝準備を始めると同時にクーラーを起動して30分ほど動かしてみたところ、外気温26℃に対し22℃台まで寝室の温度が下がっていました。
クーラーの温度設定は21℃で風量は最も弱い微風にしていますが、ポリエステルに比べて通気性の良いT/C(ポリコットン)素材でもソロテントであれば問題無く冷えますね。
寝る支度も終わったのでテントに入ってコットでごろごろタイムの始まりです。
ダクトから冷たい風が出ていて心地よいですね。
日中の炎天下で火照った私がテント内に入ったためか一時的に温度が24℃ほどまで上昇しました。
しかし、数分もするとまた23℃台まで室温が低下。いやぁ快適です。
クーラーの消費電力は150~200Wほどで、1時間動かした時点でE600LFPのバッテリー残量は66%となっていました。
このペースならば3時間で切れるかと思いましたが、設定温度近くまで下がるとコンプレッサーが休止し、微風設定ならば消費電力がほぼゼロになる時間が生まれるため、なんだかんだで4時間弱…深夜2時頃までは動いていました。
PECRONのバッテリー変換効率の高さはE2000LFPで検証済みですが、E600LFPも相当に優秀ですね。
同程度の容量の他メーカー製ポータブル電源に、今回のクーラーと同じく消費電力150~200Wのプロジェクターを接続して使用してみたところ、わずか2時間ほどしか持たなかったなんて経験もありましたが、PECRON製電源の変換効率の高さ・使用可能時間の正確さは心強いです。
ソーラーチャージャーがあればキャンプ場で充電可能
深夜には大粒の雨が降るような天気でしたが、翌朝には晴れ間が見えていました。
そこで撤収作業の前にソーラーチャージャーで太陽光充電をしておくことに。
使用したのは以前にE2000LFPと一緒に提供していただいた『PECRON 200W ソーラーパネル 36V』です。
薄曇りで太陽が完全に顔を出しているわけではありませんでしたが、それでも70Wほど出ていますね。
電源本体を充電しながら接続した家電に電力を供給するパススルー機能も備えていますので、電源本体をソーラー充電しながらランタンを充電したりも可能です。
ちなみにパススルー機能は備えていますがUPS(無停電電源装置)として使えるUPS機能はE2000LFPと同じく非搭載となっています。
UPSとして使用したい場合にはE1500 Proもしくは今後発売予定のE1500LFPを選びましょう。
E1500LFPは9月下旬~10月上旬頃出荷予定で現在予約を受け付け中です。
テント等の撤収が完了して2時間弱が経過した時点でバッテリー残量は30%まで回復していました。眩しくて見えにくいですが、この時は111W出ていますね。
今回の私は就寝時にポータブルクーラーを使いましたが、昼間に使う場合にはソーラーチャージャーさえあれば、たとえばポータブル冷蔵庫程度ならば太陽光のみで消費電力を賄えるため、614Whというバッテリー容量以上に長く使えそうですね。
手ごろなサイズと価格の優秀なポータブル電源
PECRON E600LFPは10kg未満と片手で簡単に持ち運べるサイズながら、必要な機能や高い変換効率に長寿命といった「ポータブル電源に求めるポイント」をしっかり備え、それでいてお値段は定価65,800円と手の出しやすい金額に抑えられた優秀な製品です。
定格出力は1200Wと上位製品に比べてやや控えめではあるものの、そもそもそんな消費電力の大きな機器を使えばあっという間に電池切れを起こしてしまいますので、そういった用途であれば1500~2000Whクラスの電源を選んだ方が良いでしょう。
たとえば私ですと、ホットカーペット等を使う冬キャンプならE2000LFP、そこまで大きな家電を使わない春~秋キャンプならばE600LFPという形で今後のキャンプでは使い分ける予定です。
ファミリーキャンプやグループキャンプで大人数のスマートフォンやランタンを充電したい等、どんな機器をどのくらい使うのかを考えたうえで、あなたに合う1台を選んでみてください。